涅槃姫みどろ  厄の34 「やり残し」

 神座警察署、取り調べ室。
 メガネをかけた新米刑事が容疑者に詰め寄るが、容疑者はふてぶてしい態度でまったくとりあわない。
 ドアから覗く先輩刑事たちも、後輩のふがいなさに呆れ顔。
 「こりゃ自供はダメか・・・」
 そう話を振った婦警さんはひとこと「厄いわ」と答えます。
 ひっさびさにコスプレしたみどろさんが登場。今週は婦人警官の格好です。

 
 「はぁ」
 あっけにとられる刑事二人の前からさっそうと立ち去るみどろさん
 「最近の新人婦警は言葉遣いも知らねぇのか」
 そう憤るものの、その婦警が誰だか思い出せない。
 悩む二人の前に杖をついた老刑事が登場。
 ハマさんと呼ばれる老刑事は、そのまま取り調べ室に入ると、容疑者はびびってしまい、さっきまでのふてぶてしさはなりを潜め、一気に下出にでます。
 「ネクタイ曲がってるぞ」
 そういいつつ、ハマさんは容疑者のネクタイをつかむと、そのままひっぱり机に容疑者をたたきつけます。
 文字通りネクタイで締め上げるハマさんにさすがの容疑者も自供します。
 しかし、自供すると
 「何だってお前がやってたのか?てめえ!許さねえ!!」
 と拳を固めます。
 一触即発の雰囲気の中、突然ハマさんは容疑者から手を離します。
 「今日で良かったな。運がよかったぞ」と決めてハマさんは取り調べ室をあとにするのでした。


 
 実は今日は神座署の名物刑事ハマさんの定年退職の日。
 単独捜査で暴走しがちなハマさんを嫌ってか、上司の見送りは一切ありません。
 しかし、「24時間刑事たれ」「正義を貫け」などのポリシーを持ち、かたくなに現場主義を貫くハマさんは、後輩達からかなり尊敬されているようです。
 一度目をつけたら徹底的に容疑者を追い詰めるハマさんのおかげで、所轄内の重大事件はほとんど逮捕に至っているのでした。
 しかし、そんなハマさんにも「やり残し」ともいうべき事件がありました。
 それは12年前、空き巣狙いが玄関口でおばあさんを突き飛ばして逃走したという事件で、ハマさんは当時近辺で発生していた連続強盗事件の犯人と断定して捜査にのぞみましたが、連続強盗犯が逮捕されたとき、犯人が別にいることが判明。
 結局、おばあさんは打ち所が悪かったせいかそのまま死んでしまい、ハマさんはそのことを悔い、真犯人逮捕に執念を燃やしていたのでした。
 しかし、結局思いは果たせずに、警察手帳を返すハマさん。
 その心中はいかばかりか?
 「またきてください」という後輩達に
 「冗談いうな。ようやく始末書書かなくて済むんだぞ。35年忙しかったんだ。ゆっくりさせてくれよ。な?」とビシッときめるハマさん。
 かなりカッコイイです。



 「ふう、このまずいコーヒーもこれで最後だな」
 苦い思い出の詰まった自動販売機の前で一人つぶやくハマさん。
 それでも「やり残し」が気になるようで、
 「あの犯人だけは今すぐこの世から消してやりたい!婆さんを殺した事も知らず今もどこかでのうのうと暮らしてると思うと虫酸が走るぜ!」
 気付かず叫んでいたハマさんの後ろから、「消せるわよ」と声をかけるのはみどろさん。婦警姿でコーヒーを淹れたお盆を持っています。
 「ちっ、お茶汲み婦警のたわごとか」と吐き捨てるハマさん。
 ちなみに本誌ではここのセリフは「婦警」が「帰警」になっています。単行本ではなおるでしょうか?
 ここでハマさんは長年の刑事生活で培った観察眼でみどろさんの異常に気付きます。みどろさんはもともと異常だろ、というツッコミは却下です。 
 「お前変だぞ。影が・・・なくねぇか」
 そうみどろさんは影がないのです。しかし、ハマさんの指摘を無視してそのまま立ち去るみどろさんみどろさんは都合が悪いことをいわれるといつも華麗にスルーします。
 幻覚かと想い一度目頭を押さえてから、再びみどろさんの後姿をおうハマさん。やっぱり影がありません。
 「何でえ。こんな幻見ちまうくらいぐれぇ未練になってるのかよ・・・。は・・・はは!消せるもんなら消してもらおうじゃねーか!」
 そうハマさんが叫ぶと、みどろさんは突然右腕を上げ、なにやら黒いオーラを放出するのでした。


 
 その夜、自宅の団地に戻ったハマさんは先に逝った妻の遺影に手を合わせ、定年の報告をします。
 そして息子の部屋に向かいます。
 ハマさんの息子は汚い部屋で(他人事だとは思えない・・・。)ゲームに没頭しています。はっきりいって目が死んでます・
 「道夫!まだ仕事が見つからないのか!」 
 そう、ハマさんの息子はニートだったのです。
 「これからは甘やかさんでビシビシいく!」と告げるハマさんに息子は
 「チッ!定年でヒマになったと思ったらいきなり父親面か。タマんねぇよ」と反抗的な態度をとります。
 「な、なんだと!」と激昂して息子のむなぐらをつかむハマさん
 そのときハマさんは息子が脚から消滅しかかっていることに気付きます。
 「ど、どうしたんだ!?」と驚くハマさん思い出すのは昼間に出会った不思議な婦警の姿。ちなみに回想のみどろさんは何故か後光がさしてます。
 「お、お前まさか、12年前の空き巣のは・・・犯人!!」
 そう叫ぶハマさん。
 息子もパニックにおちいったのか、
 「や、やったよ!それが何か悪いってのかよ!」と白状します。
 「バ、バカ野郎!お前、よりによって!俺をバカにしてるのか」
 ぶちきれるハマさんに言い返す息子。
 「うるせー!だから父親面すんなって言ってるだろ!
ずっと家を空けて母さんの死に目にも戻って来ないで!こっちがどんな思いで子供の頃から・・・」
 息子が悲痛な声が叫ぶ。
 「全部お前のせいだ」 
 そういいきった瞬間!ハマさんの脚もきえてきた・・・。



 マンションに響く親子二人の断末魔の悲鳴。
 何故かその屋上にいるみどろさんはたくさんのカラスに囲まれながら、
「ふふふ、因果な商売よね」とつぶやくのでした。
 
 ちなみに、編集さんのつけたアオリ文は「やり残しが人生を充実させ、後悔が人を成長させる。やり残しと後悔で紡ぐが人生。」となっています。
 はっきり言ってなんのフォローにもなってません。



 
 とゆうわけで、今週は久々にナイフみたいに尖っては障るもの皆厄くなる、みどろさんでした。カラーページで生け花しているみどろさんとは別人のようです。
 てゆうか、みどろさんが関わらなければ、何事もなかったんじゃないのかと思ってしまいました。別にハマさんは悪くないとおもうんですが・・・。
 ♪ああ、わかってくれとは言わないがそんなに俺が厄いのか?
  厄いわ。厄いわ。イケてるわ。イケてるハートの涅槃姫♪
 いや、なんとなく思いついただけなんで特に意味はありません。
 ちなみに歌いだしは♪ちっちゃなころから老けていて15で熟女とよばれたよ・・・♪