算法少女 (ちくま学芸文庫)

算法少女 (ちくま学芸文庫)

 
 「ストーリー」
 江戸時代、医者の父から和算(日本独自の数学)の手ほどきをうけた主人公おあきは、奉納された算式が書かれた絵馬に誤りを発見したところから、その算術の実力をかわれある大名から、姫君の算術のご指南役に来て欲しいと要請されます。
 なにしろ身分制度が厳しく、虎眼先生も仕官に苦労した江戸時代のこと、普通の町娘であるおあきにとっては、とんでもない申しいれです。
 ところが、当時江戸時代で一番の算学の流派である関流は、それがおもしろくなく、関流の算学を学ぶ少女と競わせることになる。
 はたして勝者は?



 「感想」
 いつも民明書房をひきあいにだす私がいうと、説得力がないですが、「算法少女」という本は江戸時代に出版された実在する本だそうです。
 こちらの小説「算法少女」は江戸時代の「算法少女」ができあがるまでの出来事を作者の想像力をふんだんにふくらませて描いています。 
 江戸時代に父親との共同執筆とはいえ、少女が数学の本を出版するなんて考えられないことだと思うのでその史料的価値は大きいのではないかと思います。
 さて、私も現在、簿記について勉強しており、数学は大変だけどおもしろいと思っているのですが、主人公のおあきも、やっぱり和算のおもしろさに惹かれているようです。
 「そこが算法のいいところ。だれがなんといおうと、正しい答えは正しいのだから」
 というセリフにはおもいきり同意してしまいました。
 ましてや、封建主義の江戸時代ということを考えるとなかなか深い意味があるように思います。
 ところで円周率を求める公式を「秘中の秘の公式」といって父がおあきに教えるのですが、こういう表現だと算法だか魔法だかわからいないです。
 そういえば「算法少女」と「魔法少女」って似ているような気もします。そうでもないか。
 さて、ネタバレになりますが、ラストおあきは経済的事情などで算法を学ぶことのできない子供達に算法を教える塾をつくることにします。
 こういう人たちのおかげで、日本の文化は創られきたんだなあ、と思うとともに「学ぶこと」と「教えること」っていうのはやっぱりおもしろいことなんだよな、と改めて思った一冊でした。