涅槃姫みどろ  涅槃交響曲  最終楽章 その序「家路」


 3本の土管が置いてある都市伝説に認定したくなるような由緒正しい空き地で、子供達にマジックを披露するあしゅら執事。
 子供達からも評判も上々のようです。
 「何でこんなところでマジックやってるの」という子供の問いに対して、
 みどろさんが長めの旅行に出てしまい、時間をもてあましてマジックの練習をしていたといいます。
 しかし、子供の興味とは常に変わるもの。今度はあしゅら執事のトレードマークである顔の半分を隠す仮面が気になる様子。
 「中どうなってるの?」と詰め寄る子供達から逃げようとするあしゅら執事の後ろから、子供の一人が仮面を奪取します。
 とったど〜!
 あしゅら執事は、実は死人でありみどろさんの魔術「涅槃転生」により黄泉がえり、顔の左半分が生前大事にしていたビスクドールのクロコちゃんになっているという人に姿をみせられぬ状態なのだ。
 しかし、「元に戻ってる!」
 なんとあしゅら執事の顔は普通の老人の顔に戻っていたのでした。
 とゆうわけでこれからは、はじめ師匠とかきます。
 はじめ師匠がふと気付くと見知らぬ匣があります。
 


 匣の中には綺麗な少女人形がぴつたり入ってゐた。


 「クロコちゃん!」と驚くはじめ師匠。
 自分の体とクロコちゃんが元に戻ったことに不審感を抱いたはじめ師匠は、みどろさんの身になにか起きたのではないかと思い空き地を後にしたのでした。





 「おかしい・・・たしかにおかしい!とにかく一刻も早く屋敷に戻らねば」
 「家路」を急ぐはじめ師匠だが、屋敷への帰り道で迷ってしまいます。
 ようやくたどり着いたと思っても、そこにはすでにお屋敷はなく全く別の一軒家が建っているのでした。
 「なかった事になっている」
 驚くはじめ師匠がみたものは、倒れているメルトくん。どこか目がうつろです。
 「何が起きたんだ!」とメルトくんの肩をゆさぶりと問いただすと、メルトくんの首がポロリと落ちます。ちなみにメルトくんはみどろさんの魔術によって人形の姿にされていた元執事です。人形の前はどんな姿をしていたのか誰もしりません。
 「お、お嬢様を捜さねば!お嬢様はどこに」
 はじめ師匠はメルトくんを抱え、みどろさんの行方を必死に探しますが、記憶がどんどん薄れていくことを感じます。
 みどろさんのキメ台詞「厄いわ」も思い出せなくなったはじめ師匠はついに誰を捜していたのかすら忘れてしまいます。
 そして、手に持っていたメルトくんのことも忘れてしまい、そのままゴミ捨て場に放置してしまうのでした。



 「で、何だっけ。何をしようとしていたんだっけ・・・」
 頼りなく街を徘徊するはじめ師匠に声をかける女性があらわれます。
 彼女こそはじめ師匠の思い人、夏子さん。
 不治の病に侵されていた元歌手である夏子さんの最後の夢をかなえるべくラストステージを用意したはじめ師匠は、彼女の病気が完治し今でもステージに立っていることを教えられます。
 「師匠は今どうされているの?」と近況をきいてくる夏子さんに対して
 「しがないその日暮らしのマジシャンでございます。・・・だったと思います」
 と妙な言い回しで答えます。
 「この前の若い女性の方は?」
 とみどろさんについて尋ねられても、
 「ええ?な・・・何でしたっけそれ」と完全にみどろさんのことを忘れてしまったみたいです。
 「じゃあお住まいは?」
 「それが・・・全くあてがありませんで。あれ住み込みで誰かに仕えていたような・・・おかしいな。そんな事ないのに」と完全に記憶が曖昧になってしまっています。
 「相変わらずおもしい人ね」と夏子さんが微笑むと、
 「いやあ恐縮でございます」と照れるはじめ師匠。かなりいい感じです。
 そして夏子さんから「行くところがないようならうちを使ってくださってもいいんですよ」と爆弾発言が飛び出します。
 「え?い・・・いや、そ、それは」と本気で狼狽するはじめ師匠。
 「そんな顔をされると私も照れてしまいますわ」
 とかなりいい感じの二人なのでした。
 

 その後、夏子さんおの紹介で再びマジシャンとして舞台にたつようになったはじめ師匠。クロコちゃんをつかった腹話術をし、タネの鳩に逃げられる。それでもお客さんには大うけです。
 第三の人生を歩みだしたはじめ師匠は夏子さんと手を繋いで「家路」につきます。
 「まさかこうして二人で家路に向かう日がくるなんて、私は幸せ者でございます」と夏子さんに話しかけるはじめ師匠。
 「あら私もよ」と答える夏子さん。心から祝福したくなるような二人です。
 「しかしなんでしょうか。時々寂しいような、何か大事な思い出を忘れてしまっているようなそんな気持ちがふと・・・」
 そうはじめ師匠がつぶやくと、ヒュウウウと黒い風を感じが吹きます。
 振り向くはじめ師匠。しかし何もありません。
 「どうしたの?」と尋ねる夏子さん。
 「いえ・・・何でもございません。年ですね。その日暮らしを続けているうちにだいぶボケました」
 「あらいやですよ」
 そう話しながら手を繋いで「家路」につく二人をみどろさんが静かに見守るのでした。

 
 
  「忘却とは忘れ去ることなり。」  
 最終回の一つ前ということで、作品の良心ともいうべきはじめ師匠について描かれています。はじめ師匠本当にダンディでしたね。
 はじめ師匠は帰るべき「家路」をみつけましたが、はたしてみどろさんの「家路」はどこにあるのでしょうか?