涅槃姫みどろ 厄の43 「吉書」

 「おめでとうございまーす!」
 晴れ着姿で笑顔で受付するのは久々登場のラーフラさん。
 ここは太田黒定男書道教室主催の「新春・特大書初め祭り」の会場です。
 「年の始まりを地域の人が集まって書を記し祝う・・・。仏に仕える身として、その信心深き行為をお手伝いするのは当然です。」
 と相変わらず大げさですが、楽しげなラーフラさん。
 そんなラーフラさんの顔が一気にくもる。
 そう、ラーフラさんが一方的に敵視しているみどろさんの登場です。晴れ着姿です。晴れ着はいいねえ。日本のうみだした文化のきわみだよ。そうは思わないかい?
 みどろさんラーフラさんにいきなり「厄いわね」といいます。新年の第一声が「厄いわね」だなんてさすがです。
「みどろ!」
 一触即発の空気の中、「おやラーフラ様、明けましておもでとうございます」とあしゅら執事はマイペースなのでした。
 「ここは祝いの場よ!何をしに来た!」 
 いきりたつラーフラさんにみどろさんは「ふふふ、見物よ」といつもの調子です。
 「去れ!悪魔!」
 険悪な雰囲気のなか、みどろさんラーフラさんの間にはいった人物こそ今回のイベントの主催者太田黒定男氏です。ターンエーガンダムのような逆立ったヒゲがチャームポイント。
 太田黒氏はみどろさんをみつけると歓迎の意思表示をします。
 実は太田黒氏はこのイベントのハイライトである特大書き初めで使う特大筆を入滅堂から購入していたのでした。
 こいつは厄いぜ!(超人機メタルダーのDVDBOXほしいなぁ)

 
 
 「みどろが現れる場所には必ずトラブルが・・・。いったい何をしに・・・。」
 お汁粉をおいしそうに食べているみどろさん(本当においしそう)をみつめるラーフラさんは「もしや!」とベタフラッシュで気付き太田黒氏のもとにかけよります。
 「先生!ひょっとして筆を買う時に何かトラブルが?」
 そうラーフラさんは問いかけますが、太田黒氏は何百年も前の中国の偉い書家が使った霊力に満ちた筆を値切って買ったと得意げにいいます。
 なぜ人はモノを安く買ったことを嬉々としてかたるのでしょうか?俺もそうだな。気をつけます。
 「値切った!?入滅堂で?」
 驚くラーフラさん。確かに入滅堂は値切り交渉とか受け付けそうにありません。
 そんなラーフラさんをよそに、太田黒氏はテレビの生中継が来ていることを得意げにいったり、やってきた偉い人におべっかをつかったりします。
 「もしや・・・かなりの俗物!?」
 再びベタフラで驚くラーフラさん。
 そんなとき通りすがりのカップルから太田黒氏の黒い噂をききます。
 女性ボランティアにセクハラで訴えられそうなことや、チャリティイベントにもかかわらず、役所からでているはずの補助金や協賛金を着服しているなど・・・。
 「俗物どころか・・・悪人!?」
 ここまで大げさに驚いてくれるとなんだか小気味いい。


 
 「書き初めはそもそも吉書とも呼ばれ願いを込めて書を書けばそれが叶うと言われています。私はここに世界平和への願いを込めましょう!」
 テレビのリポーターに堂々と答える太田黒氏はみどろさんから入手した特大筆を特大硯につけます。
 一方ラーフラさんは考えます。
 「みどろの品を手にした悪人。そして衆目の中で始まる大イベント。それを厄いわと言いながら見ているみどろ・・・。」そこでハッと気付くラーフラさん。
 「もしや、あの筆は真実を書いてしまう筆!?そして今から生中継で全国に自らの悪事を全て曝け出す。いかにもみどろが考えそうなことだわ」
 やめさせようと駆け出すラーフラさん。しかし、
 「いや、そもそも彼は罰を受けて当然の人間。全ては悪因悪果。これもまた彼が受け入れるべき罰なのでは・・・。否!これは受け入れるものではなく、人々の幸せに水を差そうとする悪魔の悪ふざけ!」 
 いろいろ悩んだ末、結局やめさせようと走り出すラーフラさん。
 走った。転んだ。特大硯の墨の海のなかにDIVE IN。
 せっかくの晴れ着を黒く染めたラーフラさんはそれでも太田黒氏を制止すべく走り出します。
 彼女をとめろ!彼女は暴走している!ラーフラさんをとめるべく追いかけるスタッフ!
 それをパフォーマンスだと思うTVリポーター。
 そしてかけっこだと思い、やっぱり走り出す子供たち。
 このままではラチがあかないと判断したラーフラさんは太田黒氏の脚にしがみつきます。なぜか子供達もそれに続きます。
 しかし、太田黒氏はまとわりつく子供達をみると、
「お、私に抱きついてくるとは熱心なファンたちじゃな!今年はノリノリじゃのう。よし私もアクロバチックに一気に書くぞ!とりゃー!」
 そう叫ぶと一気に筆をすすめます。 
 もしや・・・かなりのお調子者!?
 「ああ、ま、間に合わなかった!」
 そんな太田黒氏をみてバッタリと倒れこむラーフラさん。
 晴れ着を墨で黒く染め、一文字に倒れこんだラーフラさんをみた太田黒氏は
 「最後の一筆は書かずともこれでいい!仕上がったぞ!」
 と豪快に叫びます。
 どっとわく観衆。
 「お見事っ!!」とさけぶあしゅら執事。
 なんと巨大な紙には賀正の文字がかかれ、の最後の一画がラーフラさん自身が人文字となっていたのでした。
 ベタだ!本当にベタだ!墨だけにベタとはこれいかに!


 スタッフに注意を受けて意気消沈するラーフラさんはみどろさんが現るとくってかかります。
 「なんで賀正なのよ!あの筆には仕掛けがなかったじゃない!あなたらしくない!」
 「ふふふ、私が見に来たのはあなたの方よ」
 絶妙な間を表すコマのあとラーフラさんは叫びます。
 「まさか!厄いわは私に!?」 
 「新年早々楽しかったわ」冷静に言うみどろさんに「くそ!」と悔しがるラーフラさん。
 そこへ「受け入れなさい」と追い討ちをかけるようにラーフラさんのキメゼリフをいうみどろさん。完全にラーフラさんは遊ばれてます。
 最後にみどろさんは「ふふふ、今年もよろしく」と誰にともなくいうのでした。


 

 久々に登場したラーフラさんは本当にオバカで大満足でした。
 とゆうか完全にみどろさんの掌の上なんでそろそろ逆転の策をあみだしてもらいたいものです。
 ところで「涅槃姫みどろ」の読みきりが初めて載ったのは去年の4+5号でした。
 とりあえず祝一周年ということで、とりあえずお祝い申し上げます。
 一回目は本当に正統派ホラーだったのになあ・・・。