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涅槃姫みどろ 厄の33(単行本4巻第参拾六夜) 「名画座の怪人」
扉絵から「ローマの休日」のパロディで笑いをとるみどろさん。
さすが週チャン爆笑十傑衆の一人。(尾玉先生はまだゲスト扱いだろうし、十一傑衆では語呂がわるいと思います)ヘップバーンもびっくりだよ。
いそいそと涅槃城をあとにするあしゅら執事。
その両手には大きな紙袋が握られています。中には数十年前の貴重な映画フィルムと彼が苦労して修理した映写機が入っています。
彼がむかったのはつぶれた名画座。
そこにはすでに一人の少女がきていた。
「ゆ・う・れ・い・さ・ん」
少女が呼びかけると、
「ゴホン、お、お久しぶりでございます」と姿を隠して返事をするあしゅら執事。
「今日はこちらでございます」
銀幕に映し出されたのは。五十年以上昔の喜劇映画のワンシーン。
「おもしろーい」と拍手する少女。
しかし、映画は突然とぎれてしまいます。
「今日はフィルムの復元が・・・。いや、映写機の調子かな?う〜む、失礼」
一人つぶやく幽霊さんことあしゅら執事。
「そういえば、初めて会った時に観せてくれたのもこんなだったね」と問いかける少女。
「はは・・・。あれから半年ですか。時間の経つのは速いもので。」
「ねえ幽霊さんはずっとここにいるの?」
「ええ、私はこの名画座。映画館の幽霊ですから」
「じゃあ、迷い込んだ私を偶然見つけたの?」
「偶然ではありません。幼いあなたが背負っていた悲しみが私を呼んだのでございます」
「悲しみ・・・」
半年前・・・。
少女はべそをかきながら、すでにつぶれてしまった名画座に迷いこんでいった。
「ママ、パパ、どうして私の事を捨てたの・・・。どうして知らない人に預けたの」
捨て鉢になった少女の目の前で突然始まる喜劇映画。
「あれ?これ映画かしら?」
少女にとっては珍しい白黒の喜劇映画。喜劇王とおぼしき男がステーンと転ぶとべそをかいてた少女も思わずふきだす。
「人生には辛いことではありません。ほら楽しいこともきっとあります。」
どこからともなくあしゅら執事の声が響く。
「誰?私を捕まえに来た人?」
「いいえ、私は・・・。そう、名画座の幽霊でございます」
「ウソ、そこにいるんでしょう」
そういい、映写室に飛び込む少女。しかしそこには誰もいません。
「幽霊といったでしょう・・・。フィルムが終わるまでしばらくゆっくりご覧なさい」
そうさとすと少女は素直にうなずくのでした。
このとき天井のタイルが一枚動いていたことに少女は全く気付かないのでした。
そして映画はクライマックスをむかえ、少女は手をたたいて大喜びします。しかし、突然フィルムが途切れます。
「あ・・・、もう観れないの?」
「今度会うときまであなたが元気でいると誓ってくださるなら、またここでフィルムをお観せしてもいいですよ」
「うん。いつくればいいの!?」
こうして二人の秘密の関係が始まるのでした。
「幽霊さんはあれから何度もここでフィルムを上映してくれたよね。ほらもう元気だよ!幽霊さん、ありがとうね!」
そう元気いっぱいに叫ぶ少女。
「私だって元気をいただいております」と天井裏から声をかけながら、「幽霊の日々も辛いのでございます」と内心思うあしゅら執事。辛いんだ・・・。やっぱり。
上映も終わり立ち去ろうとするあしゅら執事。
しかし、今日は少女から幽霊さんに語りかけます。
少女のママが再婚しイギリスにいる新しいパパと二人で迎えにくることを伝えます。
「それはおめでとう・・・。」
あしゅら執事がそういうと「そんなのイヤだもん」と突然少女は叫びます。
「もう幽霊さんと会えなくなるんだよ!」
「悲しい事ですがお母さんと暮らせるならそれが一番でございますよ」
「もうあんなママ嫌だもん!」
「そんな事言ってはダメです!せっかく元気になったんです。お母さんのところに・・・」
「元気なのは幽霊さんのおかげだもん!幽霊さんとここで暮らす!」
「私は幽霊なのです!人間と暮らす事などできるわけがありません!」
「うそ!ホントは幽霊さんはいきてるんだもん!どこかに隠れてるんだ」
少女が叫ぶ!
「いえいえ、幽霊です。お帰りください」
そうつぶやくように答えるあしゅら執事。しかし、ふと手をおいたところがギシリと鳴った。
「ねえ、そこに隠れているんでしょ!姿をみせてよ!」
「ダメです。幽霊に姿などございません」
厳しくいうあしゅら執事。
しかし少女は手足をばたつかせ、
「どんな人だか知りたいもん!顔みせてくれないと出ていかないもん」と駄々をこねます。
「いけません」
あしゅら執事の叱責にも、
「じゃあずっとこうしてる!絶対に動かないから!」とついに大の字になってしまいます。
さすがのあしゅら執事も根負けしたのかとうとう姿をみせることを承諾するのでした。
ストンと屋根裏から降りてくるあしゅら執事。
顔半分が別人という異形の姿を隠すためか。ずた袋のような覆面をしています。
「お顔みせて?マスクとるよ」
好奇心のおもむくままに覆面をとる少女。
そして、絶叫!
「ぎゃあああああ!!ママ〜!怖いよぉ〜!」
それをみて一人つぶやくあしゅら執事。
「夢はいつか醒めるもの・・・。しかし束の間の夢を見させていただいたのはこの私かもしれません。これでいいのですお達者で・・・。」
たそがれてるあしゅら執事の後ろから突然現れるみどろさん。
「高齢男性、廃墟で少女にいたずら・・・。厄すぎるわ。ほどほどになさい」
こういわれると新聞沙汰になりそうな感じです。
振り返ると、あしゅら執事は脳と目玉が飛び出したグロテスクなマスクをしていたのでした。
覆面の上に覆面をかぶるなんてまるでネプチューンキングです。 ところでネプチューンキングってあんなにオーバーボディを着込んで暑くないのかとずっと気になってました。
(みどろさんが登場するとこっちも安心してボケれるね。)
「い、いえこれは・・・。」
マスクを脱ぎみどろさんに弁解するあしゅら執事。
倉庫でみつけたボロボロになった映画フィルムをなんとかしようとして、つぶれた名画座の壊れた映写機を修理して、内緒の「マイ名画座」ができあがったところに少女が迷いこんできたことを告げます。
しかみどろさんは「変態ね・・・」と一刀両断です。
「罰として映写機は没収よ」とみどろさんはあしゅら執事に告げます。非常にキビシィー!
けれども最後にくるりと振り返り、
「イケてたわよ」とサムズアップでキメるのでした。
あっけにとられるあしゅら執事。
みどろさんも結構気に入ってたみたいですね。
「あしながおじさん」にはなれなかったけれども、今週もあしゅら執事はイケてたぜ!
とゆうわけで、今週はイイ話でした。イイ話は好きだけど、ツッコミ入れにくいから困りモノです。
そのため、今回の感想はほとんどセリフを抜粋しただけになっちゃいました。まあ、こういうときもあります。
ところで、冷静に考えてみると今回は何一つ不思議なことっておきてないよね。