雑誌Cobaltにおいて掲載された短編を集めた短編集。
 写真がらみのエピソードということで、一巻からほぼレギュラー出演している、写真部のエース蔦子さんが、表紙を飾っていて驚きました。
 ついでにいうと写真部に蔦子さんと笙子ちゃん以外にも部員がいたことに驚きました。
 各短編は、本編の主要キャラは脇役に徹しており、完全新キャラや出番の少なくなったキャラ等が、主役になっており、逆に本編を補完しているように思います。
 楽しいお話や、悲しいお話、せつなくなるようなお話といろいろありますが、どれもスールもしくは姉妹のあり方を描いているように思います。
 個人的に好きなのは「温室の妖精」という話で、古い温室の薔薇をお世話する役割が、スールという関係からは逸脱しているけれども、次の世代にキチンと継承されていく様子を少しファンタジックに描いていて、とても興味深いと思いました。
 スールの本来の目的は、こういうふうに伝統とか技能とかを、継承していくことではないかと逆説的に考えました。

 ところで、それぞれの話を繋げるエピソードで、「タケシマツタコ」と書かれたフィルムについての謎が提示され、蔦子さんの灰色の脳細胞が活性化し写真部一年生である笙子ちゃんが蔦子さんを隠し撮りたものであるということが判明するわけですが、これなんかも蔦子さんの技術をを笙子ちゃんが継承しているということを示しているように思います。二人はスールじゃないですけど。
 とにかく、通算3冊目の外伝的短編集ということで、ますます「マリア様がみてる」の世界に奥行きがでてきたのではないかと思いました。