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涅槃姫みどろ 厄の35 「許されざる者」
サイキックギャル(死語)だっ!
扉絵は崩壊する都庁をバックにキメキメのみどろさん。ほの香る昭和テイストがたまりません。
とある午後の昼下がり、入滅堂で店番をするあしゅら執事。
今日も二心同体であるところのはじめ師匠とクロコちゃんの会話が弾みます。
そこに来店してきたのは一人の女子高生。
ちょっと清楚のかんじの女子高生はまっすぐに古本コーナーに向かいます。改装したのか、古本コーナーはなんだか広くなっているように思います。
キョロキョロと周りを見回す女子高生をじっくり観察するあしゅら執事。
鼻の下のびてます。
あきらかに万引き犯の予備動作なのに「良い本に出会えるといいですな」とのんきなことをいっています。
そんなあしゅら執事をからかう、クロコちゃん。この二人が痴話喧嘩を始めた直後にあしゅら執事はある異変に気付きます。
そう、棚の一角から本がごっそりと消えているのです。
しかし、女子高生の手には本はなく、代わりにかばんのなかに売り物の本がちらりと見えます。
しかし、あしゅら執事は「後でまとめて会計しようと、袋に入れておいてるんですな。きっと。」と自分にいいきかせます。
しかし、女子高生はそのままあしゅら執事の会えを素通りします。
それでも、「いやきっと、入り口にある本を見るつもりでございましょう」とまだ甘いことをいってます。
結局、女子高生はそのまま店をでていってしまいます。
ここにいたってついに女子高生に声をかけるあしゅら執事。
「あのうお嬢さん、かばんの中身をですね」
そう問いかけると、女子高生は
「うるせえなあ」と見た目の清楚から一変して、ガラがわるくなる女子高生。
かばんをめぐってあしゅら執事と女子高生がもみあうと、ついにドサドサとかばんの中から売り物の本がおちてきます。
「チッ」と舌打ちする女子高生。ガラわるっ!!
あしゅら執事は「ちょっときてもらいましょう」と女子高生を店に連行するのでした。
店内で女子高生に事情を聞くあしゅら執事。
「きっと誰にもうちあけられないやむにやまれぬ事情があってのことでしょう」とあしゅら執事は紳士的に話しかけます。
それに対して「イライラしてたんだよ!」と仮面ライダー王蛇みたいなことをいう女子高生。
しかしあしゅら執事は「そうでしたか。文学少女というのはいつも悩み多き生き物でございます」と良心的を通り越してずれたことをいいます。
女子高生は「はぁ?」と一瞬あきれたのち「あのさここ防犯カメラとかついてねーし、ゴミみたいな本でもまぁいいかみたいな。どっかで換金できるっしょみたいな」という女子高生。すごい!コギャルってもう絶滅したものだとばかり思ってました。
「何という・・・。でも、そ、それはよっぽどお金に困っていたという事なんですよね!」
身勝手な女子高生の言い分にドン引きしつつもまだ良心的に考えようとするあしゅら執事に対して
「金なら財布に入ってるよ!だからイライラしてたんだっつの。わかんねぇジジィだな!」と言い切る女子高生。
それでも「この子がこうなったには何か深い理由があると思いたい」というあしゅら執事。正直、あしゅら執事がここまでおひとよしだとは思いませんでした。2巻収録の「フライト」では墜落寸前の飛行機で繰り広げられる茶番劇を大喜びしながら見ていた人物とは同一人物とは思えません。
結局あしゅら執事は女子高生の将来を考え、警察や学校に報告することはやめ、保護者を呼ぶことにしたのでした。
「こら!忙しいのになにやってるのよもう!」
なにやら高級車ににのり、ブランドモノに身を包んだ女子高生の母親は店にやってくるやそういうと、直後に「いくら!?」とあしゅら執事に言い放ちます。
「払えばいいんでしょ?いくら!?本買い取るわよ。もちろん上乗せするわ。」そういって一万円札を数枚差し出す母親。
「そのかわり学校と警察には内緒ね。この子、来年は三年生だから内申書に変な事書かれちゃ困るのよ」
娘と同じく勝手なことしかいわない母親。いや、母親が勝手なことしか言わないから娘も真似するのか?
「この親にしてこの娘・・・。私は昨今の万引き問題の根源をみた気がします」急に社会派ぶる執事に
「こんな本いらなーい」と買い取った本を投げ捨てる女子高生。
その衝撃で無惨にも破れてしまう本たち。
ひどい!BF団だってここまではやらない!
とゆうか破ろうと思って力いっぱい引き裂こうとしてもここまで破れたりしないので、実はこの女子高生はBF団のエージェント並の実力の持ち主なのかもしれません。
「捨てといてね」と一言言い残し立ち去る親子二人。
うち捨てられた本を手に取り「お嬢様にはこの状況を何とごまかせばいいのやら・・・。」と途方にくれるあしゅら執事の後ろから「ごまかす必要はないわ」といいながらみどろさんが登場。
みどろさんは無惨な状態の本を手に取ると眉間にしわを寄せます。これはMG5(マジギレ5秒前)だっ!スッと右手をかざすみどろさん。
あしゅら執事は今回ばかりは「とめません」とそっぽを向いてしまいます。とめたことあったっけ?
そしてみどろさんは一言「・・・厄いわ」とキメゼリフを言い放ちます。
「厄いわ」は口癖みたいなもので魔術の発動条件ではないと思っていたのですが、まあいいか。この漫画、結構アバウトだから・・・。
「本の修復よろしく」最後にあしゅら執事に破れた本を手渡すとそのままみどろさんは立ち去ってしまいました。
その後、帰路に着く母と娘は車中であくまで自分勝手な話をしていると、唐突にトラックが激突!
吹っ飛ぶ女子校生。なんとか一命をとりとめた母親は、首の骨は折れ、衝撃で顔が変形してしまった、変わり果てた娘の姿をみて泣き叫びます。
「うちの徳美を・・・。徳美を!」叫ぶ母親に対して加害者である運転手は保険が対人無制限であることを確認したのち、悪鬼のような形相で言い放ちます。
「ああ?なんだよ!払えばいんだろ!?」
悪党どもに仏の慈悲は無用!といわんばかりのオチですが、正直安直な気もします。
さすがに人の命より本の命のほうが大事だとは思いませんが、私にとっても「万引きするヤツ」と「本を大事にしないヤツ」は許されざる者なので、地獄すらなまぬるいとか思うわけです。
まあ、私は読み終わった本をそのへんに投げっぱなしにしてしまうので、あんまり本を大事にしているとはいえないのですが・・・。
ところで、ブックオフとかに「涅槃姫みどろ」を持ち込んだらやっぱりみどろさんから「厄いわ」って言われてしまうんでしょうか?