■
涅槃姫みどろ 厄の28(単行本4巻第参拾弐夜) 「チャンピオン」
この作品はフィクションであり、実在の個人・団体等にはいっさい関係ありません。
いきなり気になったのはこの注意書きでした。
「俺に挑戦するなんて100億年早いぜ!」
ミスター黙示録と呼ばれる豪腕ボクサーの蜂山兵太のビッグマウスが冴える!
彼の名場面VTRを見せられて、みどろさんは「安いドラマね」と看破します。これには今回の犠牲者ならぬ依頼人の蜂山兵太も、顔色を変えてシナリオ通りであることを認めます。
実は彼はもとは売れない役者で、イカツイ顔とガタイのよさをかわれて、異色ボクサーとして売り出されてしまったのです。
ところが、もともとボクシングが好きだったことと、生真面目な性格が災いしてか、周囲が持ち上げだし、格下選手やロートル選手とのマッチングの妙もあり、名勝負をくりひろげ、気付けばスポーツ界のヒーローに祭り上げられていたのです。
この作品はフィクションであり、実在の個人・団体等にはいっさい関係ありません。
そんな虚像と現実のギャップに耐えかね、テレビ局に引退したいという意向を申し出たところ、
「次の世界タイトルの挑戦試合で勝って、チャンピオンになれたら電撃引退してもいい」という無茶な条件をつきつけられます。
対戦相手は、英雄と呼ばれるチャンピオン。事前工作が一切通用しない本当の実力者です。
この作品はフィクションであり、実在の個人・団体等にはいっさい関係ありません。
そこで蜂山はみどろさんに「次の試合に勝たせてください」とお願いするのでした。それは霊能者に相談してどうこうできる問題とは思えないのですが。
しかし、引退後は「役者として一から演技の勉強をします。僕はこれ以上大好きなボクシングを汚したくないんです」という言葉に心を動かされたのか(基本的にみどろさんは一途な人に優しい)、「引退に華を添えてあげる」と承諾するのでした。
そして、タイトルマッチ当日。
余裕のチャンピオンに対し、不安顔の蜂山。当然です。霊能者に勝利をお願いしたところで、信じるほうがどうかしてます。
そして、ゴング!開き直った蜂山がダッシュ!スリップ!しかし拳はチャンピオンのアゴにクリーンヒット!
かいしんのいちげき!
マットに沈むチャンピオンを信じられない面持ちで見つめる蜂山。
このとき、瞬間視聴率は60%をこえたとゆう。二宮清純談。
こうなると話が違ってくるのが世の習い。
インタビューで引退を表明しようとしたとき、セコンドから一ヵ月後の初防衛戦が決定したことを発表されるのでした。
そう、凄すぎる視聴率のため、テレビ局の上層部総出で土下座して、続行をお願いしたのです。
試合のギャラも10倍という破格の待遇です。
こんなおいしい条件をほっとく手はありません。
結局、防衛戦をひきうけることにした蜂山。
みどろさんへの報告は「今日の勝ちだって偶然さ」とスルーです。
さあ、バッドエンドへのフラグはたちました。偶然を必然たらしめることこそ魔術。何かを得るためには何かを犠牲にしなければなりません。
とくに、みどろさんはこういう不義理には容赦ありません。
果たして、蜂山の運命やいかに!!
初防衛戦当日。
「なあ、負けていいんだよな」と弱気モード全開の蜂山に対して、「一回負けて特訓の特番。次に別階級で返り咲くっていうシナリオだ」とセコンドはさとします。ゼーレもびっくりのシナリオです。
それを聞いて安心したのか「俺は必ず勝つ!棺桶は用意してきたかあ!?」と相手を挑発する蜂山。観客は総立ちだ。
その観客のなかにみどろさんの姿を認める蜂山。はっきりいってみどろさんは浮いてます。
そして運命のゴングがチーンとなります。「カーンじゃないぞ?」といぶかしむ蜂山にボディブローが炸裂!
桁違いの強さをみせつけられ、そのままダウンを選ぶ蜂山。
そこには役者を目指し、ボクシングを愛するがゆえに茶番と決別しようとした男の姿はありません。
「スリップ」
ジャッジの声が無情に響きます。無理矢理立たされ試合は続行。ジャッジの判定は絶対です。
この作品はフィクションであり、実在の個人・団体等にはいっさい関係ありません。
起き上がったところにチャレンジャーの右ストレートが炸裂。ふたたびダウンする蜂山。
「スリップ!スリップ!」
再びジャッジに無理矢理たたされる蜂山。さすがに判定をいぶかしく思い、ふりむくとジャッジは悪魔の形相で「キミが勝つまで終わらせないぜ!」とささやくのでした。これが涅槃流の華の添え方なのか?
その後、リングとジャッジしかいない世界(対戦者はどうしたんだろう?)でなぐられては、「スリップ」の判定を繰り返され、ついには蜂山は現実のリング上で絶命してしたのでした。
心配するセコンドをよそに観客はヒートアップ。
最高視聴率はさらに記録更新中。
そんな喧騒の中、みどろさんは「いいひき際だったわね」とつぶやくのでした。
まあ、アレですね。
この感想はフィクションであり、実在の個人・団体等にはいっさい関係ない作品についてかかれたものです。